ZAF JOURNAL | つくる
丸い座面と、厚み・ヒダのある側面。
丸い座面に、少し高さのある側面。ぐるりと並んだ布のヒダ。
ZAFの形は、禅僧が坐禅に使ってきた伝統的な仏具である坐禅蒲団、「坐蒲(ざふ)」に由来します。お尻の下に置き、両ひざとお尻の3点で身体を支え、坐禅で大切な良い姿勢をサポートするための道具です。
見た目の特徴でもある厚みやヒダは、座ったときにどう働くのでしょうか。まずは、いま目の前にある形から見ていきます。
01
お尻を支えるための厚み
坐蒲は、組んだ脚まで全体を載せる大きな座布団とは、座り方が異なります。両ひざを地面につき、少し浅めに座ることにより、骨盤をしっかり支えます。
曹洞宗の開祖である道元禅師の『正法眼蔵』「坐禅儀」にも、蒲団を組んだ脚の後ろ側に置き、背骨の下を支える使い方が記されています。身体のどこを支えるかが、道具の使い方と一緒に伝えられてきたことが分かります。[1]
ZAFも、この骨盤を支える厚みを受け継いでいます。目指しているのは、骨盤を立てやすい座り心地。高さだけでなく、重みを預けたときにどのくらい沈むかも、座り心地を考えるうえで大切な要素です。
ZAFのルーツである伝統的な「坐禅蒲団」
02
重みを受けて動く、側面のヒダ
側面をよく見ると、布が一定の間隔で折り込まれているのが分かります。これが、ZAFの形を特徴づけるヒダです。
座って重みがかかると、折り込まれた布がすこし開き、側面の形が変わります。何も乗っていないときと、身体を預けたときでは、ヒダの開き方や座面の高さにも違いが生まれます。
着座前
着座中
同じZAFの着座前と着座中。重みがかかったときの、ヒダと高さの変化。
この布の動きと、中材の支えが合わさって、座った人にあった骨盤が立ちやすい位置に導いてくれます。外から見える輪郭と、実際に座ったときの形。その両方から見ると、ヒダを設けた構造が少し分かりやすくなります。
座り心地は、中材の硬さや量、座る人の体格や座り方によっても変わります。ヒダがあることだけで、誰もが同じ姿勢になるわけではありません。形と素材を合わせて見ることが、この道具を知る手がかりになります。
03
丸い形を、古い記述からたどる
では、丸い形はいつから使われていたのでしょうか。
瑩山禅師の『坐禅用心記』には、蒲団を説明する箇所に「経亘一尺二寸、周囲三尺六寸」という小さな補足の注があります。直径と円周を示す記述で、円形の蒲団を想定したものと読めます。[2]
さらに歴史をたどると、古くは約1,200年前の中国・唐の時代、『臨済録』に「蒲団」の表記が見え、坐蒲を指していると考えられ『碧巌録』にも、百丈懐海が弟子の黄檗希運に「蒲団」を授けたという伝承があります。
背負っている円形のものが当時の「坐蒲」とされている。(「達磨」呉麟 作/最勝寺 所蔵)
ただし、形や素材、大きさや高さ、ヒダの有無までは、この記述から確定できません。現在と同じ形がいつから続いているかは、今後も資料をたどる必要があります。
丸くなった最初の理由まで説明することはできなくても、坐るための道具として使われてきた背景をたどることはできます。ZAFの丸さも、そうした坐蒲の形から受け継いだものです。
04
形を受け継ぎ、座り心地をつくる
いま、ZAFの座り心地を形にしているのは、仏具づくりの職人の手です。
カポック綿を使うZAFでは、側面のヒダにある、まだ縫い閉じていない部分から綿をすべて手で詰めていきます。布を縫い、内側に中材を収める。その工程を経て、丸さと厚みのあるクッションに仕上がります。
側面の開口部から、カポック綿を職人が手で詰める。
外から見える形を知ると、その内側にも目が向きます。どんな素材が入り、どのように詰められているのか。ヒダや縫い目をたどることは、一つの道具ができるまでを知る入口にもなります。
ZAFがこの形に見いだしているのは、身体を支えるための合理性と美しさです。お尻を支える厚み、重みを受けて動くヒダ、内側に詰められた中材。それぞれの働きが、見た目の特徴にもつながっています。
触れたときの感触や、身体を預けたときの支えられ方を、実際の身体で確かめる。ZAFは、坐蒲から受け継いだ形を通して、自分の身体の感覚に気づく時間を、いまの暮らしに届けたいと考えています。
